指で押すと、そのしこりは指先の下でするりと動きました。

石のように硬いしこりです。場所は右目の目尻の上。目を開けて外から見ると、ほとんど分かりません。それでも指で押せばすぐに見つかり、しかも動きます。

小さくても、扱いやすいものではありません。上眼窩は皮膚が薄く、すぐ横に涙腺があり、しこりは内側に入り込んでいました。そのためこの一つは、超音波を見ながら、針穴ひとつから少しずつ吸引しました。

1年前に海外で脂肪注入、1年後に目尻に現れたしこり

1年前、海外で自家脂肪の注入を受けました。額と目のくぼみの両方です。

それから1年ほどして、右目の目尻にしこりを触れるようになりました。一つだけで、石のように硬く、しかも動きます。

鏡で見ても、ほとんど分かりません。見た目には何もないのに、指では触れるのです。

1分あまりの動画:このしこりの記録

今回の経過を1分あまりの短い動画にまとめました。冒頭の触診、処置前のマーキング、目を開けたときの様子、処置前後の超音波、処置直後の触診と針穴、そして同じ角度での処置前と処置直後の比較です。ナレーションはなく、説明はすべて画面上の文字です。眼窩の解剖図と、しこりが硬くなっていくアニメーションはイメージです。

外からはほとんど見えないのに、超音波でははっきり映る

目を開けると、目尻の皮膚はごく普通に見えます。超音波を当てると、皮膚の下に丸い黒っぽい領域があり、それが触れていたしこりでした。

ここで超音波がしたことは二つです。一つは、しこりが確かにそこにあり、どのくらいの大きさかを確かめること。もう一つは、皮膚からどのくらい近いか、内側へどこまで入り込んでいるかを見ることです。その後の処置は、すべてこの地図が頼りです。

重要なポイント: 見えないからといって、確かめなくてよいわけではありません。目尻のような場所では、指で分かるのは一部だけで、全体像は超音波で見えます。

注入した脂肪が、少しずつ硬くなる理由

自家脂肪の注入では、入れた脂肪がすべて生着するわけではありません。生着した部分は周りの組織の一部になります。生着しなかった部分は、体がなんとか処理しなければなりません。

吸収されるものもあれば、組織の膜に包まれ、時間とともに少しずつ線維化して、柔らかいものが硬く変わっていくものもあります。この方のしこりは、注入から1年ほどで触れるようになった、石のように硬いタイプでした。

同じように注入した脂肪が硬くなり、目の下にできた例は、目の下の脂肪注入のしこりを摘出した記録をご覧ください。この記事では、目尻のこの一つだけを扱います。

目尻のこのしこりが難しい理由

上眼窩は、もともと扱いやすい場所ではありません。皮膚が薄く、表面の許容範囲がとても小さい。外上方には涙腺があり、処置の範囲はそこを避ける必要があります。

このしこりには、もう一つ難しさがありました。皮膚の層にあるので浅いのですが、内側へ出っ張っていて、押すと隣の眼窩の骨の縁と同じくらいの深さに感じられます。指先の硬さだけでは、どこまでがしこりで、どこからが骨の縁なのか見分けにくい。しかも動きます。

指で触る超音波
見つけられるか触れるが、動くので位置を定めにくいかたまり全体の範囲が見える
深さ眼窩の骨の縁と同じくらいで区別しにくい皮膚の層にあり、内側へ出っ張っているのが見える
処置中感覚が頼り見ながら進められる
左右にスワイプして表全体を確認できます

つまりこのしこりは、指の感覚だけで処置するには精度が足りませんでした。

重要なポイント: 小さいものほど、扱いが難しいことがあります。しこりが小さく、皮膚が薄く、すぐ横に涙腺がある。そのぶん、誤差の許される範囲も小さくなります。

超音波を見ながら、針穴ひとつから少しずつ吸引

超音波で位置を確かめ、針穴ひとつから入り、画面を見ながら少しずつ吸引しました。取り出したものはすべて針の中に収まり、表面に残るのは針穴ひとつです。

目尻は皮膚が薄く、すぐ横に涙腺があるので、一つひとつ超音波の画面で確かめながら進める必要があります。

処置直後:あの黒いかたまりは消え、押しても平ら

吸引のあと、もう一度超音波で見ました。黒っぽい領域は消えていました。

処置直後、しこりがあった場所を押すと平らでした。表面には針穴がひとつあるだけです。

これは処置直後の記録です。その後の腫れの引き方や回復にかかる期間には個人差があり、この方については処置直後の記録しかないため、この記事ではその後の結果は書いていません。

以前の上まぶたの症例との違い

以前、別の患者さんの上まぶたの脂肪注入後のふくらみの記録を書きました。どちらも上眼窩への脂肪注入のあとに問題が起き、どちらも超音波を使い、針穴ひとつから処置しました。ただ、二つの状況は違います。

あちらは脂肪が浅い層に、やや多めに入っていて、上まぶた全体がふくらみ、強く目を閉じるとさらに目立つ状態でした。そのため段階的に、控えめに取り出しました。こちらは石のように硬く動くしこりが一つだけで、外からはほとんど見えず、難しさは深く隠れていて指では位置を正確につかめない点にありました。

同じ部位でも、問題の形は大きく違うことがあります。だから毎回、まず見て確かめてから、どう処置するかを決めます。

動画はご本人の同意を得て使用しており、同じ患者さんの処置前と処置直後の記録です。個別の症例であり、効果には個人差があります。針穴からの摘出後は内出血や腫れが出ることがあり、回復期間には個人差があります。取り残しがないかは、再診時にあらためて超音波で確認します。

よくある質問

脂肪注入のあと、硬くて動くしこりを触れます。これは何ですか?

注入した脂肪が生着せず、膜に包まれたあと線維化して硬くなったしこりの可能性があります。ただし動く硬いしこりには、ほかの可能性もあります。フィラーの移動、リンパ節、脂肪腫も似た感触になることがあります。まず超音波で、何なのか、どの層にあるのかを確かめます。頬に動くしこりを触れたらも参考にしてください。

外から見えないのですが、それでも処置が必要ですか?

見えるかどうかと、処置するかどうかは別の話です。まず超音波で、何なのか、大きさ、周りの組織との関係を確かめ、そのうえで処置するかどうか、いつ処置するかを一緒に考えます。

硬くなった脂肪のしこりは、注射で溶かせますか?

ヒアルロニダーゼが分解するのはヒアルロン酸で、脂肪や硬くなった組織には作用しません。ステロイドはしこりと周りの本来の組織を区別できないため、しこりは小さくならないまま、周りが先にへこむことがあります。上眼窩のような薄い皮膚では、それがそのまま見た目に出ます。このように硬くなったしこりは、多くの場合、見つけて取り出す必要があります。

なぜ超音波が必要なのですか。触りながら吸引できないのですか?

このしこりは内側へ出っ張っていて、押すと眼窩の骨の縁と同じくらいの深さに感じられ、しかも動くため、指の感覚だけでは位置を定めにくい状態でした。すぐ横には涙腺もあります。超音波を見ながら行うことで、位置を正確に定められます。

処置後は腫れますか。回復にはどのくらいかかりますか?

この記録は処置直後までです。押しても平らで、針穴がひとつ。その後の腫れと回復には個人差があり、再診のときに実際の経過に合わせてご説明します。

傷あとは残りますか?

このしこりに使ったのは針穴ひとつです。針穴は小さいものの、傷あとの残り方は体質、部位、術後のケアによって変わり、個人差があります。

脂肪注入を受けて、硬いしこりを触れる方へ

額や目のくぼみ、目の周りに脂肪注入を受けて、いま硬いしこりを触れるなら、外から見えるかどうかにかかわらず、まず超音波での評価をお勧めします。何なのか、どの層にあるのか、隣に何があるのかが分かって初めて、処置するかどうか、どう処置するかを相談できます。

脂肪注入後のしこりへの対応は、自家脂肪合併症の修正にまとめています。

オンライン相談から、どうぞお気軽に状況をお聞かせください。


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著者について

劉達儒 医師、麗式クリニック院長。超音波ガイド下でのフィラー合併症修正を専門とし、「見えて初めて安全に扱える」という原則を大切にしています。


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